RSウイルスとは

RSウイルスのイラストRSウイルスは世界的に流行を繰り返す主要な呼吸器病原体で、生後1歳までに約半数、2歳までにほぼ全例が感染し、終生免疫は得られず、再感染するケースも少なくありません。
乳幼児の肺炎の約50%、細気管支炎の50〜90%をRSウイルスが占めており、小児医療における疾病負荷は極めて大きいといえます。世界では、年間3,380万例のRSウイルス関連下気道感染症、340万例の入院、6〜20万例の死亡(開発途上国が大部分)と推計されています1)。日本でも毎年12〜14万人の2歳未満児が診断され、約4分の1が入院を要します2)。また、国内の重症例(酸素投与以上)における死亡率は0.3%と報告されています3)
さらに、RSウイルス感染による医療費負担も重く、一般病棟で1日平均34,548円、集中治療室では541,293円と試算されています4)

重症化のリスク児に対しては、抗RSウイルスモノクローナル抗体製剤であるパリビズマブ(シナジス®)が2002年に、長期作用型のニルセビマブ(ベイフォータス®)が2024年に国内承認され、先天性心疾患・早産・新生児慢性肺疾患・免疫不全などの対象で有効性が確立されています。近年、日本におけるRSウイルス流行の季節性は変動しやすく、従来の秋冬中心のパターンから外れ、春季流行や二峰性の流行など、年ごとに大きな変動がみられます。これにより、抗体製剤の適切な投与開始時期の判断が難しいという課題が生じています。
一方で、全国調査では入院リスクが高いにもかかわらず、抗体製剤の適応外の基礎疾患を有する児が多数存在すること5)、さらに数として入院の大部分を占めるのは健常正期産児であることが明らかとなっています。こうした状況に対し、健常正期産児を含むすべての新生児・乳児を予防する新たな選択肢として、妊婦への組換えRSウイルスワクチン(アブリスボ®)が2024年から日本で使用可能となっています。また、ニルセビマブは、リスク児以外の健常正期産児に対しても適応を有します(日本では保険適用外)。これらの製剤は今後、従来は予防が困難であった健常正期産児に対する予防戦略対策の中心的役割を担っていくことが期待されています。

引用文献

1)Mazur NI, et al. Lower respiratory tract infection caused by respiratory syncytial virus: current management and new therapeutics. Lancet Respir Med. 2015; 3(11): 888-900.
2)Kobayashi Y, et al. Epidemiology of respiratory syncytial virus in Japan: A nationwide claims database analysis. Pediatr Int. 2022; 64(1): e14957.
3)渡部晋一, 他. 重症RSウイルス感染症の実態調査 ―基礎疾患,医療ケアとの関係について-. 日児誌. 2020; 124(5): 927-936.
4)Nagasawa K, et al. Disease burden of respiratory syncytial virus infection in the pediatric population in Japan. J Infect Chemother. 2022; 28(2): 146-157.
5)Mori M, et al. Nationwide survey of severe respiratory syncytial virus infection in children who do not meet indications for palivizumab in Japan. J Infect Chemother. 2011; 17(2): 254–263.

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